は し が き

 東日本大震災が起きてから約1年。この間、多くの人々が被災地・被災者支援に
立ち上がった。美容も例外ではない。美(理)容師や美(理)容専門学校生がボランテ
ィアとして被災地入りし、美容・理容のサービスを行ったというニュースもたくさん見
てきた。大手の化粧品会社が移動美容車を出して、被災地を循環していることも
ニュースになったし、この美容車は今でも被災地をめぐってサービスを続けている。
 なぜ、このようなことがニュースになり、なぜ、人から喜ばれるか? やはり、
特に、女性にとって「美」は主たる関心事であり、それは、平時であっても被災後
であっても変わらないからである。言い換えれば、被災によって美容サービスを受け
られないことは、大きなストレスである。被災した状態でも美容サービスを受けられ
ることが大きな喜びであり、心を明るくすることである。ともすれば暗くなりがちな
被災地において、訪問美容も含めた安定的な美容サービスの提供に対するニーズは
非常に大きい。
 震災のことだけでなく、高齢化がどんどん進む我が国では、訪問美容サービスの市
場が増えつつある。被災地で、店自体が津波に流されたり、原発事故で店を継続でき
なくなった美容師もたくさんいるが、そういう美容師が美容室の再生・再建を図ると
き、この増大する市場をとらえることは非常に大切なことである。
 本事業は、被災地の美容ニーズに合わせられるように、美容師のスキルアップを図
るプログラム開発を目的としている。そこでは、単にサロンの中での美容技術を伸ば
すだけでなく、外へ出て、介護分野の知識や技術、訪問マナー・コミュニケーション
といった異分野のスキルを身につけなくてはならない。これは一朝一夕に成し遂げら
れることではないが、被災地、特に、福島を支援し、何年後かに福島県が美容業界の
モデル県になれるぐらいの意欲をもって、継続的に事業を進めていきたい。文部科学
省の事業目的に沿い、少しでも被災地支援に役立つプログラム開発を行っていきたい
と考える次第である。

平成24年3月
学校法人 大美学園 大阪美容専門学校
「訪問美容・介護を柱に被災地の美容施設を再建する人材の育成」推進協議会